
プロフィール ● '69年、東京生まれ。学習院大学卒。音楽活動から小説家へ転身し、'02年『ダークサイド・エンジェル紅鈴 妖の華』で第2回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞、'03年『アクセス』で第4回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞。
『ストロベリーナイト』
誉田哲也/著
光文社 700円(税込)
警視庁捜査一課所属の警部補・姫川玲子が、直感と行動力を武器に、惨殺死体が暗示する底知れない悪意へと挑む。『ソウルケイジ』、『シンメトリー』、『インビジブルレイン』と続く姫川玲子シリーズ第1作。
捜査官の人間性や生活感に警察小説のおもしろさがある
--- 警察機構を題材としたミステリー小説や青春小説に、独自の作風を築く人気作家・誉田哲也さん。その代表作でもある姫川玲子シリーズの『ストロベリーナイト』は、2年前にスペシャルドラマ化され、1月からは連続ドラマとしてもスタート。昨年オンエアの『ジウ』など、今や警察ドラマになくてはならない原作者でもある。
「映像化は光栄ですが、僕からすればライバル作品でもありますし、ぜひ両方を見比べてみてほしいですね。小説では玲子の語る部分に彼女の姿はない。自分の視界に自分は映らない。でも、ドラマでは竹内さんが映り込む。その時点で既に違うモノなわけですから。僕自身、みなさんと同じようにその違いを楽しもうと思っています。音楽で言うオリジナルとカヴァーのような関係なので、むしろ違わなきゃ面白くないでしょう?」
--- 今回のドラマ化では、『ストロベリーナイト』から続く姫川玲子シリーズの原作から、「シンメトリー」「右では殴らない」などの各作品が題材となるという。
「警察小説と言っても、いわゆる捜査の鬼、“ザ・刑事”のような作品ではありません。捜査一課で殺人事件を担当している人間も、新しい服は欲しいし、おいしいものも食べたい。捜査以外の部分での人間らしさ、生活感を書いているので、そこに警察官のおもしろさを感じてもらえたらいいですね。事件は玲子の勘に乗っかる形で解決されますが、そうした第六感は誰にでもあり、玲子だけが超能力者なわけじゃないですし(笑)」
“登場人物を書く”とは、憑依してすくい取る感覚
--- ヒロインが特殊な名探偵ではないという意味でも、一般的なミステリーとは趣が異なる。
「小説というゲームボードを挟んで、読者の方と知恵比べをするつもりはないんですよ。犯人探しよりも、犯行の背景や、登場人物の心境に思いを巡らせてもらいたい。そのためにも、登場人物それぞれの考えや見え方の違いを、異なる文体で表現することが重要だと思っています。同じ玲子の文体にしても、『ストロベリーナイト』と成長後の『インビジブルレイン』では違う。そこに誉田哲也の文体は必要ないですし、個人的な考え方や見方はできるだけ排除する。登場人物が自分に憑依してくると言われる作家さんは多いですが、僕は逆で。登場人物に憑依して、彼らが見聞きしたことを色眼鏡なしにすくい取る感覚ですかね」
-- そうした誉田さん作品のキーワード“多視点”は、エクセルで作られるという登場人物のプロット表など、緻密な構成があってこその技。と同時に、独特なリズムによる読みやすさも作品の大きな魅力となっている。
「一文を長くしないようには心がけています。また、比喩を使わないこと。登場人物が忙しいからでもあるのですが、普通の生活では、16時になったからとい ってサバンナの夕陽を思い出してたそがれたりはしないわけです(笑)。他に考えなきゃならない現実が多すぎる。そこが、僕にとっての“登場人物を書く”ということでもあるんです」
-- 姫川玲子シリーズは現在4作品+スピンオフ1作品。連続ドラマに加え、長編連載の新作もスタートするなど、進化は続く。
「連載中の新作では、玲子は新たな職場に移り、公務員として粛々と仕事を続けていきます。が、そこで最悪の殺人鬼と対峙することになり…。成長した彼女の姿を書くことが、僕自身も楽しみですよ」
取材・文/藤井淳 撮影/木村利美

