Book interview

プロフィール
有川浩 ● 高知県生まれ。第10回電撃小説大賞『塩の街 wish on my precious』で'04年にデビュー。『図書館戦争』で第39回星雲賞を受賞。『フリーター、家を買う。』、『県庁おもてなし課』など映像化作品も多数。

TSUTAYA 今月のイチ押し

文庫
『図書館戦争』
有川浩/著
角川グループホールディングス
700円(税込)


人気シリーズの第1弾。国家の武力検閲が許された近未来、公共図書館は蔵書と提供の自由を守るため戦闘部隊“図書隊”を創設。高校時代の“王子様”への憧れから図書隊員に志願した笠原郁は、鬼教官の堂上に日々しごかれながらも、好きな本と自分の想いを守ろうと奮闘していた。

 

図書館を巡る戦いを描いた人気シリーズが実写映画化, 有川浩

図書館を守るための戦いは自由な思想を守る戦いです

--- 本、恋、自由。一見すると無関係にも思えそうな題材を“守る”というテーマで紡ぎ、原作のみならずアニメも大ヒットしたエンターテインメント小説『図書館戦争』。待望の実写映画化にあたり著者・有川浩さんにお話をうかがった。まずは物語の設定が、日本図書館協会が掲げる《図書館の自由に関する宣言》から生まれたことについて。

「決意に満ちあふれた宣言で、戦いに対する意思表明がすごくカッコイイと感じました。この宣言がもっとも面白く成立する舞台設定は、実際の戦闘状態に陥っている状況だろうとの思いから物語の構成を始めました」

--- 有川さんにとっての図書館とは、どのような存在なのでしょうか?

「さまざまな本との、なかったはずの出会いを提供してくれる場所だと思います。と同時に、利用者の思想を守る組織でもあるのではないかと。どんな本に対しても差別をしないことで、自由な思想を保証する組織だというのが、私なりの理解です」

--- 本を検閲から守るため国家組織と戦う、物語の軸でもある“図書隊”の基本精神ですね。

「彼らは、例え図書隊を批判する本であっても守ります。すべての本と、本を有する図書館を守ることが、(国民の)思想の自由を守ることであるというレトリックですので。ただそれは、そうした部分に思いを向けてもらえれば私がちょっと嬉しいというだけです。読者のみなさんには本を自由に読む権利がありますから、ヒロインが織りなすラブコメとして読まれてもいい。図書隊がすべての本を隔たりなく守るように、読者のみなさんが好きに読みながら楽しんでいただけて、そこで何かが残ってもらえれば嬉しいですよね」

“正しいもの”とは誰が決めるべきでしょうか

--- 読み手に委ねられた自由さが、幅広い層から支持される理由なのかもしれません。

「どんな状況や組織であっても、そこに人がいれば人間関係が生まれるはずです。ヒロイン・郁と手塚の友情関係もその一環ですし、郁が“王子様”を探し求めて図書隊員になったという設定から、恋愛の部分がクローズアップされてくるのは当然の流れだとも思います」

--- 郁の“あたし”と自称するキャラにも、親近感を感じます。

「新井素子さんの作品を数多く読んできた影響かもしれませんね。登場人物のエチュードで会話を転がしてみたときに、彼女がもっとも饒舌になる一人称が“あたし”だったという感じでしょうか。ただ、私が選び、言わせているわけではありません。キャラクターは物語や作者の都合で動かさず、それぞれが自由に生きるべきだと考えていますから」

--- その姿が生き生きと描かれるからこそ、訴えるテーマにも真摯に向きあえるのでしょうね。

「手に取る本が誰かの手で取捨選択されたものならば、それがどれほど怖いことか。“正しいもの”を決めるのは、誰なのか。子どもからエロ本を取り上げるのはお母さんの仕事であって、国の仕事ではない。そうした部分も感じてもらえると、作者はちょっと喜ぶかもしれません」



取材・文/藤井淳  撮影/木村利美