インビクタス/負けざる者たち
クリント・イーストウッドの新作が“ネルソン・マンデラ”を主人公にした作品だと聞いた時、どんな政治映画になるのだろうか、と思っていました。ところが「インビクタス/負けざる者たち」を見終わって、最初に感じたのは、イーストウッドという人はなんという人なんだろう、でした。2000年以降、彼が作る映画はどれをとっても“秀作”以外の何物でもありません。
1994年、南アフリカ共和国に初めての黒人大統領が誕生しました。“ネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)”その人でした。27年間、前政権のもとで投獄されていた“不屈の人”です。そのマンデラが、1995年、すでにきまっていた“ラグビー・ワールドカップ”開催に向かって意欲を見せはじめます。アパルトヘイトの象徴だったラグビー(白人のするスポーツ)の南アのチーム“スプリングボクス”には黒人の選手はひとりだけ。あとは白人ばかり。何故、マンデラは、この“南アの恥”と呼ばれたチームに肩入れしたのか…。そこにはマンデラの壮大な目的があったのです。チームのキャプテンであるフランソワ・ピナール(マット・デイモン)を官邸に招いて語り合った時、ピナールはマンデラの目的に気付きます。
一年かけてチームは変身を遂げます。ラグビーの試合も感動的ですが、マンデラの目的に、涙を流すほど胸がふるえました。日本の政治家と比べてしまいました。2010年幕開けの大傑作であります。
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■「インビクタス/負けざる者たち」劇場・作品情報
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(C)2009 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.
貴方たちは、“霊”の存在、“霊界”の存在を信じますか。私はそれらを直接見たことはありませんが、“気配”を感じることがあります。地方に仕事に行った時、予約していたホテルの部屋に入ると、ベッドサイドにどうしても目をむけることが出来ない。何かがいる、存在の気配を感じるのです。仕方なく畳敷きの方で布団をまるめて一夜をあかした…なんてことがあります。私よりズーッと強く、このような体験をしているのがピーコです。そういう類いの人々の必見の映画が「ラブリーボーン」であります。「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソンが、脚本にもたずさわり、監督として手がけた、世界的ベストセラーになったアリス・シーボルトの原作を映画化したものであります。
スージー・サーモンという魚みたいな名前の少女が14歳で殺されてしまいます。彼女は父と母、妹や弟と幸福な生活をしていました。それが一瞬にして壊されたのです。スージーの魂は現世と天国との間の場所にいます。そこから残された家族たちと自分を殺した男を見つめます。家族の絆をどう保つか…。スージーが思えば、その念は家族に伝わっていくのか。それらをピーターは素晴らしい映像で見せてくれます。天国らしき場所には草原の中に一本の樹が立っていて、枝々には葉がギッシリと繁っています。ある日、風が吹くと、その葉たちは樹から離れ飛んでいき、何時の間にか葉が鳥になり、鳥は群れとなって彼方に去っていきます。こんな風な映像が次から次へと出現してきます。そしてラスト…。少なからぬ衝撃があります。それは“霊界”の思いと現世との間にある何か…が映像になったからです。一見の価値、充分あり。
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■「ラブリーボーン」劇場・作品情報
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Dr.パルナサスの鏡
この何年かのテリー・ギリアムの映画は、昔の作品より精彩を欠いていたと思います。「未来世紀ブラジル」で見せてくれた奇想天外な空想の世界を望むのは無理な気持ちがしていました。「ラスベガスをやっつけろ」「ブラザー・グリム」が不発となってしまったのは資金難だけではなかったのでしょう。だから「Dr.パルナサスの鏡」の試写に出向く時、期待半分、アキラメ半分の気分で挑んだのであります。
ところがどうでしょう。オープニングからこれはスゴイ!!何時もと違う、いや、そんなことよりスクリーンに目が釘付けになってしまいました。馬車に仕込まれた舞台の上で繰り広げられる、言葉で表現出来ない出し物の数々(Dr.パルナサスと呼ばれる千年生きているという老人が、人の心に秘められた欲望を具現化して見せる見世物…。例えば、ひとりの女が森の中を歩いてみたいという欲望を持つときには、老人の後ろにある鏡を通り抜けると、そこには舞台の上にある書き割り、そう、紙と木で出来た森が出現して、彼女はそこに踏み込みます。そして…)の奇想天外なイマジネーションの楽しさ。それは映画以外では表現出来ないものでした。この映画はヒース・レジャーという俳優の死で製作中止になるところ、ギリアムの発想で実現した、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルという3大スターの登場によって、一段とスケール・アップした作品です。今、映画で見ることの出来る最良のブラック・ファンタジーを是非!!
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■「Dr.パルナサスの鏡」劇場・作品情報
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「ターミネーター3」の監督、ジョナサン・モストウの「サロゲート」は、ロボット工学が進化した近未来、人間のあらゆる社会活動を代行する“サロゲート”と呼ばれる身代りロボットが開発され、人類は自宅からサロゲートを遠隔操作するだけで、社会に“生身”をさらす必要のない世界を作り出した。当然、生身を外に出さないから“安全”だし、生活は“快適”になるはずだった。タイトル・バックは“サロゲート”の生みの親であるライオネル・キャンター博士が創立したVSI社が、どのようにロボットを進化させたかの歴史を綴っていきます。14年前、11年前、7年前、3年前、そして現在…。FBI捜査官のトム・グリアー(ブルース・ウィリス)は、若いふたりの男女のサロゲートが殺された事件を同僚の女性捜査官ジェニファー(ラダ・ミッチェル)と追いかけていた。若い男はキャンター博士のひとり息子で、何者かから、サロゲートと操作する人間を一瞬のうちに殺すことの出来る武器を手に入れた模様だった。その犯人は市内モニターの監視担当官によって判明し、グリアーのサロゲートは犯人を追い、サロゲートが入ってはいけない地域に入り込み、そこの住民に破壊されてしまう。咄嗟に操作装置から抜け出し、命びろいしたグリアーは、その後、生身を曝け出して犯人の背後で糸を操る人物を探りはじめた。そして、その結果、衝撃的な事実が…。犯罪捜査までロボットが行う、そんな世界は“愛”の育たない世界なのか…。
初老になってからのウィリスの格好良さに拍車がかかりました。ストーリー展開の面白さと映像の上手さ、スピード感ある演出で、ラストのアッという風景まで一気に見せてくれます。
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■「サロゲート」劇場・作品情報
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(C)Touchstone Pictures, Inc. All Rights Reserved.
ずっとあなたを愛してる
「イングリッシュ・ペイシェント」で圧倒的な演技を見せてくれたクリスティン・スコット・トーマスは、時々、スクリーンに顔を出しますが印象の薄い役ばかりでした。でも、今公開されている「ずっとあなたを愛してる」での彼女は、甦ったように素晴しい演技を見せてくれます。ジュリエットは息子殺しの罪で刑務所に15年間入っていて、出所してきます(この誰もいない空港の待ち合い室で煙草を吸っているクリスティンの表情のスサマジイこと…)。迎えに来たのは血は繋がってはいても疎遠だった妹のレア。彼女はナンシーの街の大学で講師をしていて、夫と義父、ベトナム人の養女と暮している。レアの周りにはジュリエットが出所してきたことは知らされていない。レアの夫は息子を殺した女が一緒に住むことに嫌悪感を持っている。そんな中でジュリエットの再生が始まる。映画の2/3は、ジュリエットは寡黙で通します。クリスティンは抑えた演技をつづけます。
しかし、ラスト30分あたりから、何故、息子を殺さなければならなかったのか、ということが暴かれていく瞬間から、激しい感情を前面に押し出してきます。それは美事な演技で、愛する者を手にかけてしまった母親の心境、そのことで生きることを終わらせてしまった人生、その姉を必死で抱き締める妹、もうスクリーンを見ることが出来ませんでした。涙で…。
ラストのクレジット・タイトルに流れる、バルバラの“いつ帰ってくるの”の主題歌でまたまた涙・涙でした。監督はフランスの小説家で、映画監督は初のフィリップ・クローデル 。妹のレアはエルザ・ジルベルスタインです。
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■「ずっとあなたを愛してる」劇場・作品情報
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(c) 2008 UGC YM - UGC IMAGES - FRANCE 3 CINEMA - INTEGRAL FILM
THE 4TH KIND フォース・カインド
私は“地球外生物”の存在を信じています。それは、多分、フォース・カインドを経験したからだと思います。松山千春クンと足寄に向う“黄金街道”で車のフロントガラスに燃えるような真っ赤な丸い玉が出現しました。時間は午後11時頃。車は時速150キロ(途中でパトカーに訊問されましたが…)で走っていたのに、その丸い玉はフロントガラスの枠からハミ出ることはなく、10分くらい同じ位置に留まっていました。そして翌朝、足寄あたりでUFO騒ぎがあったのです。その他にも北陸で1回、岐阜で1回目撃していましたので、存在は確信に近いものがあります。
「フォース・カインド」は2000年10月に、アラスカ州ノームという町に住むアビゲイル・タイラーという心理学者が不眠症を訴える住民に睡眠療法をほどこしたところ、考えられないような表情が見られました。そのため、彼女はビデオカメラで治療の様子を記録することに…。
さて、カメラが捉えたものは…それは想像を絶するものでした。ただし、この映像は粒子が粗い上に、肝心要の部分の映像の乱れ(としても映っているものの異常さは判ります…)がヒドく、そのためオラントゥンデ・オスサンミ監督は、ミラ・ジョヴォヴィッチら役者を使って再現ドラマを作りました。スクリーンを二分して左にビデオ映像を、右に再現ドラマを写し出すという手法で映画を完成させました。
さて、信じるかは貴方次第なのであります…。
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■「THE 4TH KIND フォース・カインド」劇場・作品情報
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メリル・ストリープという女優のスゴさ、素晴らしさは、イヤというほど、30年を越える長きに渡って見てきました。ある時にはポーリッシュ訛(なまり)の英語でオスカーを獲り、ある時は、まるでボートレースの選手のようにボートを繰って激流に挑み、バイオリンを巧みに弾き、有名ファッション誌の編集長にもなり、15回のアカデミー賞ノミネートをはたし、2度もオスカーを手にしました。何本の映画に出演しても、その都度、違うメリルに会いました。そして今回の「ジュリー&ジュリア」でも、今まで見たことがないメリルに会うことが出来るのであります。
彼女の役は1960年代のアメリカで誰ひとり知らない人がいないという実在の人物ジュリア・チャイルドという料理研究家です。助手のいないアメリカ人のためのフランス料理のレシピ本を出版し、自らテレビの料理番組のホステスを勤めました。旦那が外交官で、パリ在住の時、"ル・コルドン・ブルー"のプロ養成コースで学んだユニークな女性。一方ジュリーの方は、2001年のニューヨークに住み、自分の人生のために一年間でジュリアの524のレシピをクッキングして、それをブログに載せて、超有名人になったジュリー・パウエル(エイミー・アダムス)。この実在のふたりの女性を一本の映画に登場させて、美事な、楽しい映画にしたのがノーラ・エフロン監督です。
メリルの16回目のオスカー・ノミネート確実の演技とエイミーの可愛いらしさを堪能してください。
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■「ジュリー&ジュリア」劇場・作品情報
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キャピタリズム/マネーは踊る
「ボウリング・フォー・コロンバイン」でアメリカの“銃社会”を取り上げ、「シッコ」でアメリカの“保険制度”を斬ったマイケル・ムーアが、今回は“金融業界”に目を向けたのが「キャピタリズム/マネーは踊る」であります。
2008年9月15日、リーマン・ブラザーズの破綻により“世界同時不況”に陥りました。そもそもは“サブプライム・ローン”が端緒(きっかけ)になったこの恐慌に誰が手を貸したのか、金融業界だけでなく、この20年間の政府に、どんな財務長官が就任し、どんな政策をとってきたかを、ムーア独特のケレン味たっぷりの語り口で解きあかしてくれます。オープニングは“何故、ローマ帝国は崩壊したか”というスタイルで、独裁的な手法をとっていた“皇帝”らを描き、その皇帝の顔の部分にアメリカの政府の歴代高官の顔をモンタージュして、仕組としては同じだ、ということを語り、フォードからクリントンまでの財務長官がほとんど“ゴールドマン・サックス”のお偉方が横滑り的に就任しているのを曝きます。低所得者に住宅を買わせ、そのローンを証券化し、世界中にバラまいたのはド奴なのかが一目僚然に判るのであります。
そして“デリバティブ”とは何か、説明してくれとウォール街に乗りこみ、果ては街全体に“クライムテープ”を張りめぐらします。
“たった一人の反乱”。肥った大きな身体を動かし、駆けずりまわる姿に、思わず拍手を送ってしまいます。秀逸なドキュメンタリー。
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■「キャピタリズム/マネーは踊る」劇場・作品情報
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(C)Front Street Productions, LLC.
カールじいさんの空飛ぶ家
私はアニメーションというのは映画とは違うジャンルのものとズーッと区別してきました。勿論、幼い頃はディズニーの(今ではクラシックスと呼ばれる)アニメを見て育ちましたから、映画では無いとは思っていませんでしたが、実写とは根本的に違うものだと頑(かたくな)に思っていました。それはアニメが手描きからCGになっても変わりませんでした。「モンスターズ・インク」や「ファインディング・ニモ」を優れているとは思っても、どこか暖か味の少ない映像だと感じ、心から拍手を送ることはありませんでした。
しかし「カールじいさんの空飛ぶ家」を見て、アニメ映画も、こんなに見る人を感動させるのだ、と目が覚める思いをしたのであります。特にオープニングの10分間のモンタージュ・シーン。カールとエリーの出会い、そして恋におち、結婚しての幸せな日々、病いに倒れたエリーの静かな死と、ひとり残されたカールじいさんの孤独…。ふたりが共に歩んだ人生を、映像と音楽のみで見せてくれます。これだけで涙がでて、感動してしまったのです。このあとカールじいさんはエリーばあさんとの夢の場所に風船で吊った家で出掛けます。8歳のラッセルを相棒に…。78歳のヒーローと鮮やかな映像、素晴しい音楽、大人も子供も充分、楽しめる美事な映画になっています。
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■「カールじいさんの空飛ぶ家」劇場・作品情報
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(C)WALT DISNEY PICTURES/PIXAR ANIMATION STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.
「2012」は、総ての人が見るべき映画です。秀作だから、傑作だからではなく、“疑似体験映画”として、何時かきっと来る世界の終末に対して“心の準備”のためにも見るべき映画なのです。
ストーリーは“ディザスター映画”の今まであったものと大差はありません。ジョン・キューザック扮する主人公が、元妻であるアマンダ・ピートと自分のふたりの子供を助けるために(元妻の今の夫も入れて…)大奮闘する姿を中心に、その時、アメリカの政府は…科学者たちは…、世間の大都市は…なんていうエピソードを入れていきます。ただ、見どころは、今までと違う、非常に進化したVFX・CGの技術によって製作された映像であります。ロサンゼルスを襲うマグニチュード10.9の大地震によって崩れ去る高層ビル、うねって盛りあがり、崖になっていく道路、破壊される空港、イエローストーン国立公園は、火山が誕生していたるところで噴火が起り、溶岩が噴出する、リオデジャネイロではコルコバードのキリスト像が崩壊し、バチカンでは大聖堂が倒壊し、ヒマラヤ山脈に大津波が押し寄せる…。など、考えられる世界のいたる所の終末を描いています(この仕事には日本人のスタッフが活躍しています。31歳の坂口亮さんという人で、去年、第80回のアカデミー賞で“科学技術賞”でオスカーを受賞しています)。これらの映像は画期的なものです。一見の価値あり。
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■「2012」劇場・作品情報
■「2012」TOL特集ページ
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