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春との旅

2010-05-20
春との旅

 本当に久し振りに日本映画の秀作を見ました。小林政広監督作品「春との旅」であります。小林監督は日本より海外での名声が高い人ですが、今回の「春との旅」は原作、脚本、監督の3役をこなしました。昔、鰊(にしん)で賑わった北海道の増毛の海辺がオープニングの舞台。70歳を超えた老漁師の忠男と孫娘の春が喧嘩ごしで出て来て増毛の駅まで歩いていく。地元の小学校の給食係を廃校のため失業した春が東京に出たいと言い、その為、足が不自由でひとりで暮せない祖父を、祖父の姉兄弟のどこかに引き取ってもらおうと宮城まで親戚を訪ねる旅に出発するふたり。10何分間の長い移動から、スクリーンに目が吸いついたみたいに映画に見入ってしまいます。
 このあと、気仙沼の忠男の兄夫婦のところと末弟の内縁の妻を訪ねます。次に大崎市・鳴子温泉の姉の旅館を…そして仙台で弟夫婦のマンションを、と撮影を順撮りしながら物語は展開されていきます。高齢者社会になり、このシチュエーションが絵空事では無く現実にせまって見える現代を、映画は鋭く抉りとっていきます。“家族とは…”“兄弟姉妹とは…”“祖父と孫娘とは…”“離婚とは…”どうにも解決がつかなくて、動くより仕方無いと訪ね歩くうちに見えてくるものとは…。人物はクローズアップかバストショットでとらえ、風景の中にいる時はロングで処理をするというリズムがいいテンポで流れていきます。それぞれのエピソードで思わず泣いてしまうほどでした。今のところ“本年度ベストワン”の邦画です。
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「春との旅」劇場・作品情報
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プロフィール

おすぎ
1945年神奈川県生まれ。映画評論家。テレビ、ラジオ出演のほか新聞・雑誌の執筆、講演やイベントの企画制作など多岐にわたり活動している。

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