シャーロック・ホームズ
コナン・ドイルの史上最高の私立探偵を、装いも新たに映画化したのが「シャーロック・ホームズ」であります。さて、その斬新なホームズを監督するのは…「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」の、そしてマドンナの前の夫である、ガイ・リッチーであります。オリジナル・ストーリーを担当(脚本も)したのはマイケル・ロバート・ジョンソンで、コナン・ドイルの味を生かして、奇想天外な展開を見せてくれます。 さて、ホームズを演じるのは誰か、といえば「アイアンマン」のロバート・ダウニー・Jrであります。頭脳明晰、格闘能力抜群、という設定でありますが、ダウニー・Jr.に果たして演じられるか、という興味を(私には、どうしても“アイアンマン・ダウニー・Jr.”としか見えなかったのでありますが…)、ワトソン君のジュード・ロウは如何に…というのは、これがまあハンサムで、最近のロウの出演映画の中では一番の出来栄えであります。まず、足が短く見えなかったのが大満足でした。そして“敵”は、邪悪な黒魔術を操る男、ブラックウッド卿で、マーク・ストロングが演じます。そのうえ、秘密結社も絡んで、禍々しい展開に…。紅一点のアイリーン・アドラー(レイチェル・マクアダムズ)は、果たしてスパイなのか…。造船所の大クレーンのアクションが見ものであります。
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■「シャーロック・ホームズ」劇場・作品情報
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(C) 2009 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
「ハートブルー」の監督で、ジェームズ・キャメロンの元奥さんのキャスリン・ビグロー監督が作った「ハート・ロッカー」は、今までの彼女の作品と違って、極めて緻密に構築された、イラクの駐留米軍の爆発物処理班の日々の作業を見せる、優れた戦争サスペンスものになっています。爆弾処理というのは、どんな作業をするものなのかをオープニングから見せてくれます。それも予想外のトラブル発生で大爆発を起こし、起爆装置を爆弾に装填しに行った班長が爆死する、というところから始まります。そして、代わりに着任したジェームズ軍曹の、死と背中合わせの任務を、少しの恐怖も持ち合わせず、異様なまでに落ち着いて黙々と行うその姿に緊張感はイヤが上にも盛りあがり、映画を見終わった時にはフッと息を抜いて、思わず“疲れたあ”と口にしてしまうほどであります。2004年のイラクの街や砂漠での日常は、テロリストが仕掛けた爆弾物との闘いだったことが鮮明に判ります。地面に埋められた幾つもの爆弾、それに付いている沢山のコード。ビルの入口に置いてある車の中にギッシリと埋まった爆弾。車全体を壊しても、どこに発火装置があるか判らない…。子供の死体の腹を裂いて内臓を取り出し、そこに爆弾を埋めたもの等々。映画を見ているというより、戦場の目撃者になった体験を味わいます。
ハリウッドの大物スターが顔を見せて、すぐ死ぬシーンあり。そのスターは誰?
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■「ハート・ロッカー」劇場・作品情報
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(C)2008 Hurt Locker, LLC. All Rights Reserved.
あのサンドラ・ブロックが“ゴールデン・グローブ賞”で主演女優賞を獲り、“米アカデミー賞”でも主演女優賞にノミネートされている映画「しあわせの隠れ場所」(日本語タイトルがダサい…)が公開されます。どんな映画かというと、プレスシートに“全米で誰もが知っている黒人のアメリカンフットボールのスター選手、彼は家も愛もない子供だった――その少年と、彼を引き取った家族との絆を描く感動の実話”と書かれている通りの映画です。こんな文章を読むとつまらなさそうに思えますが、これが、本当に感動ものの映画なのです。マイケル・ルイス原作の「ブラインド・サイド/アメフトがもたらした奇蹟」をジョン・リー・ハンコックが映画化しました。スラム街で育ったマイケルを、インテリアデザイナーのリー・アン・テューイとその夫ショーンが引き取ってアメフトを教えるストーリーは、イヤ味がなくストレートで、見ていて気持の良い映画になっています。ただ美しいだけで表情に乏しいサンドラにとって、この役はうってつけでした。感情を出さず、そのくせ、上流社会の女性が持つ雰囲気を美事に表現していて、文句のつけようがありませんでした。マイケル役のクイントン・アーロンも貧困の中で育ち、殆ど教育を受けていない孤独な青年という側面と、スポーツ万能の才能を立派に表現していて、こちらも気持が良い演技を見せてくれます。この春、一番のスポーツ映画でしょう。
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■「しあわせの隠れ場所」劇場・作品情報
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(C)2009 ALCON FILM FUND, LLC ALL RIGHTS RESERVED
行定勲監督は「世界の中心で、愛をさけぶ」や「北の零年」などで“巨匠”のひとりになった感があります。それはそれでよろしいかと思いますが、「今度は愛妻家」で、昔のプログラム・ピクチャーを意識した作品にも挑戦するという意欲を見せてくれてもいます。
そして今度は“原点回帰”とばかりの「パレード」が公開されます。吉田修一の原作を、脚本も自身が書いて、これがかなりスリリングな秀作に仕上がっています。
「嫌なら出てくしかなくて、居たければ笑ってればいい」と都内のマンションに暮らす4人の男女、まあ、いうならばルームメイトでしょうが、そんな軽さが無い若者たちなのです。映画会社に勤めている直輝(藤原竜也)、イラストレーターの未来(香里奈)、フリーターでアイドルとの秘かな恋を享受する琴美(貫地谷しほり)、大学生の良介(小出恵介)は、どちらかというと楽しんで生活を送っているというより、それぞれが心の中に焦燥感を抱え、自分探しをしながら、表面は優しさと怠惰さを装っての生活を送っていた。そんなサークルの中に、新宿2丁目を中心に、その日暮らしをしているサトル(林遣都)が現われ、マンションの中に加わってから事態は変ってくる。近所で起った、若い女性を襲う事件もストーリーの味付けにし、サスペンスが盛り上がっていく。
香里奈が存在感を示し、サトルを演ずる林遣都が異色な役柄を好演している、最近の邦画の中ではピカイチの映画になっています。
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■「パレード」劇場・作品情報
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(C)2010映画『パレード』製作委員会
公開間際になって、唐突に、何の予告もなく試写が組まれ、まったくタイトルも知らない映画を見せられる、なんてことは、ここ何年もありませんでした。「バレンタインデー」という映画の予備知識がまったく無く、このタイトルだもの、今の今、公開しなければ“出し遅れの証文”になってしまうからなんだろうなあ…と思った次第であります。監督は「プリティ・ウーマン」「プリティ・プリンセス」のゲイリー・マーシャル、ということで、ジュリア・ロバーツとアン・ハサウェイが顔を見せているオールスター映画であります。ロサンゼルスを舞台に“バレンタインデー”の1日に、何組かのカップルが、どのように“愛”をからめて過ごしたかを描きます。メインのストーリーとして、花屋を経営するアシュトン・カッチャーが恋人に指輪を贈って結婚のOKをもらうシーンから始まります。ところが花屋にとって、最も忙しい日のひとつが“バレンタインデー”。恋人とゆっくり過ごせるわけではなく、この婚約に暗雲の気配が…。そこから彼の周りの人物たちの愛のエピソードが連鎖的に描かれていきます。幼い初恋から熟年夫婦の愛まで。特に見ていてホロリときたのはシャーリー・マクレーンと夫のヘクター・エリゾンドのエピソード。往年の女優だったシャーリーを妻に持った夫は“ある事実”を知り、ひとりで墓地で開催される映画会に行きます。
こんな風なバレンタインの過ごし方もアリなんだぁと感心したあとのちょっぴりのホロリは楽しかった。そして“バレンタインデーが嫌いな人の会”があったりして、整理はついていないし、キレもないが、まあまあ及第点!!
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■「バレンタインデー」劇場・作品情報
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(C) MMIX NEW LINE PRODUCTIONS, INC.
インビクタス/負けざる者たち
クリント・イーストウッドの新作が“ネルソン・マンデラ”を主人公にした作品だと聞いた時、どんな政治映画になるのだろうか、と思っていました。ところが「インビクタス/負けざる者たち」を見終わって、最初に感じたのは、イーストウッドという人はなんという人なんだろう、でした。2000年以降、彼が作る映画はどれをとっても“秀作”以外の何物でもありません。
1994年、南アフリカ共和国に初めての黒人大統領が誕生しました。“ネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)”その人でした。27年間、前政権のもとで投獄されていた“不屈の人”です。そのマンデラが、1995年、すでにきまっていた“ラグビー・ワールドカップ”開催に向かって意欲を見せはじめます。アパルトヘイトの象徴だったラグビー(白人のするスポーツ)の南アのチーム“スプリングボクス”には黒人の選手はひとりだけ。あとは白人ばかり。何故、マンデラは、この“南アの恥”と呼ばれたチームに肩入れしたのか…。そこにはマンデラの壮大な目的があったのです。チームのキャプテンであるフランソワ・ピナール(マット・デイモン)を官邸に招いて語り合った時、ピナールはマンデラの目的に気付きます。
一年かけてチームは変身を遂げます。ラグビーの試合も感動的ですが、マンデラの目的に、涙を流すほど胸がふるえました。日本の政治家と比べてしまいました。2010年幕開けの大傑作であります。
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■「インビクタス/負けざる者たち」劇場・作品情報
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(C)2009 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.
貴方たちは、“霊”の存在、“霊界”の存在を信じますか。私はそれらを直接見たことはありませんが、“気配”を感じることがあります。地方に仕事に行った時、予約していたホテルの部屋に入ると、ベッドサイドにどうしても目をむけることが出来ない。何かがいる、存在の気配を感じるのです。仕方なく畳敷きの方で布団をまるめて一夜をあかした…なんてことがあります。私よりズーッと強く、このような体験をしているのがピーコです。そういう類いの人々の必見の映画が「ラブリーボーン」であります。「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソンが、脚本にもたずさわり、監督として手がけた、世界的ベストセラーになったアリス・シーボルトの原作を映画化したものであります。
スージー・サーモンという魚みたいな名前の少女が14歳で殺されてしまいます。彼女は父と母、妹や弟と幸福な生活をしていました。それが一瞬にして壊されたのです。スージーの魂は現世と天国との間の場所にいます。そこから残された家族たちと自分を殺した男を見つめます。家族の絆をどう保つか…。スージーが思えば、その念は家族に伝わっていくのか。それらをピーターは素晴らしい映像で見せてくれます。天国らしき場所には草原の中に一本の樹が立っていて、枝々には葉がギッシリと繁っています。ある日、風が吹くと、その葉たちは樹から離れ飛んでいき、何時の間にか葉が鳥になり、鳥は群れとなって彼方に去っていきます。こんな風な映像が次から次へと出現してきます。そしてラスト…。少なからぬ衝撃があります。それは“霊界”の思いと現世との間にある何か…が映像になったからです。一見の価値、充分あり。
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■「ラブリーボーン」劇場・作品情報
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(C)2009 DW STUDIOS L.L.C. All Rights Reserved.
Dr.パルナサスの鏡
この何年かのテリー・ギリアムの映画は、昔の作品より精彩を欠いていたと思います。「未来世紀ブラジル」で見せてくれた奇想天外な空想の世界を望むのは無理な気持ちがしていました。「ラスベガスをやっつけろ」「ブラザー・グリム」が不発となってしまったのは資金難だけではなかったのでしょう。だから「Dr.パルナサスの鏡」の試写に出向く時、期待半分、アキラメ半分の気分で挑んだのであります。
ところがどうでしょう。オープニングからこれはスゴイ!!何時もと違う、いや、そんなことよりスクリーンに目が釘付けになってしまいました。馬車に仕込まれた舞台の上で繰り広げられる、言葉で表現出来ない出し物の数々(Dr.パルナサスと呼ばれる千年生きているという老人が、人の心に秘められた欲望を具現化して見せる見世物…。例えば、ひとりの女が森の中を歩いてみたいという欲望を持つときには、老人の後ろにある鏡を通り抜けると、そこには舞台の上にある書き割り、そう、紙と木で出来た森が出現して、彼女はそこに踏み込みます。そして…)の奇想天外なイマジネーションの楽しさ。それは映画以外では表現出来ないものでした。この映画はヒース・レジャーという俳優の死で製作中止になるところ、ギリアムの発想で実現した、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルという3大スターの登場によって、一段とスケール・アップした作品です。今、映画で見ることの出来る最良のブラック・ファンタジーを是非!!
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■「Dr.パルナサスの鏡」劇場・作品情報
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「ターミネーター3」の監督、ジョナサン・モストウの「サロゲート」は、ロボット工学が進化した近未来、人間のあらゆる社会活動を代行する“サロゲート”と呼ばれる身代りロボットが開発され、人類は自宅からサロゲートを遠隔操作するだけで、社会に“生身”をさらす必要のない世界を作り出した。当然、生身を外に出さないから“安全”だし、生活は“快適”になるはずだった。タイトル・バックは“サロゲート”の生みの親であるライオネル・キャンター博士が創立したVSI社が、どのようにロボットを進化させたかの歴史を綴っていきます。14年前、11年前、7年前、3年前、そして現在…。FBI捜査官のトム・グリアー(ブルース・ウィリス)は、若いふたりの男女のサロゲートが殺された事件を同僚の女性捜査官ジェニファー(ラダ・ミッチェル)と追いかけていた。若い男はキャンター博士のひとり息子で、何者かから、サロゲートと操作する人間を一瞬のうちに殺すことの出来る武器を手に入れた模様だった。その犯人は市内モニターの監視担当官によって判明し、グリアーのサロゲートは犯人を追い、サロゲートが入ってはいけない地域に入り込み、そこの住民に破壊されてしまう。咄嗟に操作装置から抜け出し、命びろいしたグリアーは、その後、生身を曝け出して犯人の背後で糸を操る人物を探りはじめた。そして、その結果、衝撃的な事実が…。犯罪捜査までロボットが行う、そんな世界は“愛”の育たない世界なのか…。
初老になってからのウィリスの格好良さに拍車がかかりました。ストーリー展開の面白さと映像の上手さ、スピード感ある演出で、ラストのアッという風景まで一気に見せてくれます。
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■「サロゲート」劇場・作品情報
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(C)Touchstone Pictures, Inc. All Rights Reserved.
ずっとあなたを愛してる
「イングリッシュ・ペイシェント」で圧倒的な演技を見せてくれたクリスティン・スコット・トーマスは、時々、スクリーンに顔を出しますが印象の薄い役ばかりでした。でも、今公開されている「ずっとあなたを愛してる」での彼女は、甦ったように素晴しい演技を見せてくれます。ジュリエットは息子殺しの罪で刑務所に15年間入っていて、出所してきます(この誰もいない空港の待ち合い室で煙草を吸っているクリスティンの表情のスサマジイこと…)。迎えに来たのは血は繋がってはいても疎遠だった妹のレア。彼女はナンシーの街の大学で講師をしていて、夫と義父、ベトナム人の養女と暮している。レアの周りにはジュリエットが出所してきたことは知らされていない。レアの夫は息子を殺した女が一緒に住むことに嫌悪感を持っている。そんな中でジュリエットの再生が始まる。映画の2/3は、ジュリエットは寡黙で通します。クリスティンは抑えた演技をつづけます。
しかし、ラスト30分あたりから、何故、息子を殺さなければならなかったのか、ということが暴かれていく瞬間から、激しい感情を前面に押し出してきます。それは美事な演技で、愛する者を手にかけてしまった母親の心境、そのことで生きることを終わらせてしまった人生、その姉を必死で抱き締める妹、もうスクリーンを見ることが出来ませんでした。涙で…。
ラストのクレジット・タイトルに流れる、バルバラの“いつ帰ってくるの”の主題歌でまたまた涙・涙でした。監督はフランスの小説家で、映画監督は初のフィリップ・クローデル 。妹のレアはエルザ・ジルベルスタインです。
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■「ずっとあなたを愛してる」劇場・作品情報
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