【出演者】 仲間由紀恵/加瀬亮/風間杜夫/戸田恵子/松重豊/陣内孝則/井川比佐志/岸部一徳/八千草薫 ほか
仲間由紀恵、加瀬亮主演で日常に埋もれた小さな幸せ=奇跡を描く

さまざまな事で傷つき、心を閉ざした登場人物たちが、日々の暮らしに小さな喜びを見出して、心を開いていく姿を描く山田太一脚本のヒューマンストーリー。現代社会に生きる人間たちが不器用に交流し、少しずつ希望を見出していく姿を通して、普段、気づかないことでも、実は奇跡的な幸せだというメッセージが込められている。山田太一が連続ドラマの脚本を担当するのは11年ぶり。独特のセリフ回しや、人間の深層に流れている感情の動きを、仲間由紀恵や加瀬亮ら演技派キャストが、どのように演じていくか注目。
ある日、駅のホームでたたずむ藤本誠(陣内孝則)を見た中城加奈(仲間)は、見ず知らずの男・誠が自殺をしようとしているのではないかと思う。また同じく駅のホームに偶然居合わせた田崎翔太(加瀬)も、同時に危機感を感じたが、なんと2人で誠を突き飛ばしていた。誠は「自殺なんて考えてなかった」と憤ったが、不思議な縁で出会った加奈と翔太。その場は別れたが、翔太はなぜか加奈のことが気にかかり、加奈を追いかけて駅の外へ。その日は見失ったが、喫茶店で偶然、加奈と再会し、少しずつ距離を縮めていく。
■中城加奈(29)(仲間由紀恵)
営業用の調理マシンを作る会社のセールスウーマン。穏やかそうに見えるが、実は心に傷を抱えている。祖母の静江とは友達同士のように接しているが、家族の中でもどこか心を閉ざし、孤独を感じている。翔太に自分と似た匂いをかぎ取り、少しずつ好意を持っていく。他人と深く接することを恐れているような素振りも見せる。
■田崎翔太(31)(加瀬亮)
仕事は左官。駅のホームの事件以来、加奈に興味を持ち、不器用ながらに近づこうとする。気は優しくいが、まじめ過ぎる性格が災いしてか、世渡りは不得手。加奈と同じように心に傷を抱えており、それを知らずに、何かの縁を感じている。意外と行動派で、加奈の家の近所まで行ってしまい、加奈にとがめられる。
■藤本 誠(50)(陣内孝則)
駅のホームで加奈と翔太に「自殺しようとしている」と思われ、突き飛ばされた男。本人は「そんなつもりはなかった」と怒っていたが、数日後、その事件でお世話になった警官の元を訪れ、あの2人に謝りたいと連絡先を聞こうとする。実は、誠自身、何やら大きな問題を抱えている様子?
■中城朋也(58)(岸部一徳)
加奈の父親。加奈同様、穏やかな風ぼうをしているが、何か家族に言えない秘密を抱えている気配があり、母の静江に気付かれている様子。仕事が多忙なせいか、あまり家には戻って来ない。加奈との関係もどこか他人行儀。妻が趣味に高じている姿をどこか冷めた目で見つめている。
■中城静江(76)(八千草薫)
加奈の祖母。何か気になることがあると落語などを聞いて気を紛らわせている。家族の心が微妙にバラバラなことに感づいていて、朋也が帰宅している時などに、加奈に「様子を見に行ってみて」と告げるなど、家族全員を気にかけている。加奈とは友達のように接し、加奈も、静江とはよく会話をしているようだが…?
日常に埋もれた小さな幸せ=“ありふれた奇跡”を描く群像劇

山田太一が11年ぶりに連続ドラマを担当する、仲間由紀恵、加瀬亮主演のドラマ「ありふれた奇跡」。普段、生活している中で、誰もが見落としがちな小さな奇跡を描くドラマの会見は、物語が醸し出す雰囲気そのもののような穏やかな空気の中で行われた。
まずは統括プロデュースの中村敏夫から「『風のガーデン』に続く、フジテレビ開局50周年記念ドラマの第2弾です」と挨拶が。「今、ドラマの不作の時代と言われていますが、山田先生、仲間さん、加瀬さんのフレッシュな組み合わせで、できるだけ新しいドラマをもう一度作りたい」と意気込みを語った。
次に脚本の山田が「若い人向け中心のドラマばかりの中、もう出る幕はないと単発ばかり手がけていました(笑)。俳優がロミオとジュリエットのロミオを演りたいのと同じで、引き受けたはいいが失敗をさらすのは嫌でしたが、素晴らしい俳優に恵まれ、素晴らしい仕事ができていると思う」と力強く語り、拍手を誘った。

いよいよ俳優陣がコメントを。調理器具の営業をしている中城加奈役でヒロインの仲間由紀恵は「素晴らしい先輩方に囲まれて緊張しています。山田先生の脚本を演じさせてもらって私で大丈夫だろうかと不安を抱えています(笑)。まずタイトルが素敵ですね。普段生活をしていて、成功やお金持ちと結婚するというような大きな奇跡ではなく、日常の中で気づかないことがあるんじゃないか。そんなことが秘められたドラマです」と。
同じく主演で、佐官業を務める青年・田崎翔太役の加瀬亮は「初の連ドラ出演が山田先生の脚本で幸せな体験をしています。慣れない作業で戸惑うこともありますが、毎日、懸命に作っている。温かいドラマになっています」と手ごたえを。
加奈の父で、家族に言えない秘密を持った中城朋也役の岸部一徳は「いいドラマは、いい脚本と格闘して何か表現していくことで出来ると思う。そういうものに出会いたい時に、このドラマに出会えた」と喜びを。

加奈の祖母・中城静江役の八千草薫は「おもしろくて楽しい性格の役を演じています。行動的で楽観的な役と言われた時に、すぐに引いてしまう癖がある私は、どういう人になればいいのかとも思ったが、演じてみれば役の静江はすぐそばにいる気がして安心した」と役がらに惚れ込んだコメントを。
翔太の父・田崎重夫役の風間トオルは「テレビのフレームで山田先生の作品の中で生きる幸せを感じている。男を作って出て行った女房が復縁したいと戻ってきたストレスを解消したいと女装クラブの会員になる役。そこで岸部さん演じる朋也さんとお会いします。実に面白い役どころです」と。
皆が山田の脚本の素晴らしさを語っている中、傑作なのは、加奈と翔太に自殺しているところを止められる男・藤本誠役の陣内孝則のコメント。「色紙にサインを頼まれた時、よく座右の銘が3つあります。1、他力本願。2、棚からぼた餅。3、漁夫の利。今回は、棚からぼた餅で山田先生の作品に出演できました」と。また役柄については「世相を映している。リーマンショック、派遣社員切りなどの言葉が出る前にこの脚本を読んだのでこれは『予言の書』だと思ったほど。ただ危惧しているのは、僕と加瀬くんのシーンを、監督が1カット1シーン、どんぶり(長回し)で撮ること。やっつけ的な? 山田先生、もっと丁寧に撮るように言ってください(笑)」と冗談交じりに語り、会場に爆笑の渦が起こった。
また山田脚本の独特のセリフ回しについては仲間、加瀬ともに「独特だが、言葉にした時にしっくりくる」と絶賛。さらに作品のテーマである小さな幸せについて、仲間は「朝、晴れている時にレインボーブリッジを走るときれいな青空が見える。ほっとする瞬間」、加瀬は「その日の天気にもよるが、晴れた日だと、スタジオに行く途中の木々などに目を取られてはっとすることがある」と、それぞれ日常の中の小さな幸せを感じるようになったと語った。
最後に山田が「もういつ死んでもおかしくない年になったので、今、生きていることが奇跡。昨日、台本を持っていかなければならなかったが、午後に孫が来て遊んでいるうちに時間がたってしまった(笑)」と、小さな幸せと失敗談を交えたコメントでしめ、会場は温かい笑い声に包まれた。
登場人物それぞれが抱えた心の傷や秘密が明かされていく中、物語はゆったりとそしてスリリングに進んでいく。物語の周着地点はどこなのか予想しながら、自分たちの日常の中に小さな奇跡が潜んでいないかを探してみるきっかけにするにも良さそう。日々のストレス対策のためにもぜひ見ておきたい1本だ。

























