贅沢な時間をあなたに

著名人コラム 贅沢な時間を応援!様々な分野で活躍する4人の、それぞれの「贅沢な時間」とは・・・?

Life is Beautiful

12/17(木)up!

リーちゃんとバイバイするだけで大泣きしてしまったり、夜中になにが悲しいのか分からないのに涙がとまらなくなってしまったり、とあの頃の私が妙にセンチメンタルだったのには、実は、大きな理由が。そして、リーちゃんと“女の友情”を築いた(と私が思った)決定的な瞬間も、その中に。
 2009年5月18日。
 モルディブでの結婚式&ハネムーンから帰ってきて10日ほど経ったその日の夜、リーちゃんとふたりきりで家にいた私が見つけた、ビッグニュース。
「帰ったら一緒にしようね」と夫と約束していたのに、やっぱり彼が帰ってくるまで待てなくなった私は、夕方、リーちゃんの散歩もかねて竹下通りのマツキヨへ(当時、原宿に住んでいた)。お目当てのものをひとつ買うと、「早く、早く」とリーちゃんをチョコチョコ走らせながらマンションに戻った。
そして、ユニットバスのトイレに腰掛けて、濡らしたばかりの紙の上にブルーのラインがじわりじわりと浮き上がってくる様子を見つめていると、どっと込み上げてきた興奮の涙。ぼやけた視界の中でも、+サインはハッキリ見えた。

予感は、的中!

パンティをずりあげ、トイレから飛び出して机の上の携帯をつかんだが、いや、待てよ。このニュースは、直接、ダーリンの目を見て発表したい。
それを伝えた瞬間の彼の顔を、両手ですっぽり包みたい。
でも! あぁ! うわぁ! 喜びがあふれじゃくって、さっきから踊りまくっている私のココロ。コレ、ダレかに言わなきゃ収まらない! あぁ! もぉ! ウズウズしちゃう。言いたくってたまらない。むしろ、叫びたくってたまらない。んでもって、ダレかと一緒に、キャーもうヤバイねキャーキャーキャーもうチョーヤバイよね、とアホみたいに喜び合いまくりたい!
夫には直接伝えるとして……。と、携帯を開いてみたが、でも、いや、待てよ。やっぱり私は彼に、誰よりも先に、一番最初に、報告したい。私はグッと我慢して、携帯を置いた。でもまだ夕方で、夫が帰ってくるのはもう何時間も後になる。う、うおぉ……。苦しい。
ひとりで数分間のたうちまわった後、私はクルッと振り返った。そこには、クッションの上でゴロンとしている、リーチャンの小さく丸い後ろ姿。私は静かに彼女に忍び寄り、彼女の背中をトントンッとたたいてみた。

「ねぇねぇ」
自分から話しかけておきながら、私はまだ葛藤していた。言っちゃってもいいかなぁ。この人(?)、一応、犬だしね(?)。リーちゃんに言ったとしても、最初に伝えた人間はダーリンってことに、なるしね(?)。んー、もう、ガマンできないっ!

「赤ちゃん、できたよ」

 大声で叫びたいくらいの勢いで言葉にしてみたのに、私の声は、自分でも驚くくらい、とてもとても小さかった。

「赤ちゃん、できたんだよ」

モルディブで、ふたりだけの結婚式。

自分の声が聞きたくて、私はもう一度、言ってみた。そしたら、自分の言葉に感動しちゃって、泣けてきた。耳元で何かを囁かれてこそばゆかったのか、キョトンとした丸い目でリーちゃんは私の方を振り返った。しかし、彼女はすぐにまたクルッと顔を背け、クッションにチョコンと顔を置いてしまった。
一番最初に教えてあげた(?)にも関わらずの、彼女のまさかの、無反応。(笑)。でも、大感動の最中にいた私は、そんな仕打ち(?)も気にならなかった。
まだお医者さんに行ったわけではないし、無事に生まれてくるかも、まだ分からない。思いっきり期待したとで傷つくのは怖いから、+サインを見た瞬間から胸に込み上げっぱなしの“喜び”にブレーキをかけたい気持ちもあったのだけど、それでももう、どうやっても押し込められないくらい、私は嬉しくって、嬉しくって、もぅチョー嬉しくって、たまらなかった。
私は、クッションの上に顔をのせ、小さく丸くなっているリーちゃんの背中に、そっと顔をのせてみた。
 「リーちゃんは、私の親友だよ。だって、一番最初に教えてあげたんだもん。ね。ね。リーちゃん。うちら、女同士だもんね、頑張ろうね。(なにを?)」

 あれから、約半年後。次にリーちゃんがうちに泊まりにきたのは、お義母さまが韓国のチェジュ島にお友達と旅行にでかけた、10月下旬だった。妊娠発覚から5カ月が経ち、私は妊娠8カ月を迎えていた。
大きくなったお腹を指差して、リーちゃんに「ドゥ・ユー・リメンバー・ザ・ニュウス?」と聞いてみたが、リーちゃんはハテナ顔。んもぅっ! 一番最初に教えてあげたっていうのに! (←しつこい)。
リーちゃんは、引っ越して前よりも広くなった我が家のリビングをクルクルと走り周り、前のマンションにも置いていた丸いラグを見つけてはすぐにオシッコをかけ、マーキング。新居にも、そして私にも、すっかり慣れた様子でソファの上でくつろぐリーちゃんを見ていたら、なんともいえない愛おしさを感じた。私はよっこらしょっとリーちゃんの隣に腰掛けて、自分のまあるいお腹をなでた。
「ミズキくぅん。リーちゃんがきたよぉ。聞こえますかぁ? 」

私がいつものようにお腹の中の赤ちゃんに話しかけていると、リーちゃんが急にビクッと体を動かして、私のお腹の上に飛び乗ってきた! え、どうしたの? と驚く私の上にリーちゃんはぐんぐんよじ登り、シッポを思いっきりフリフリしながら私にペロペロキスをした! 
彼女が夫にそうしているのはよく見ていたけれど、彼女が私にキスするのはこれが初めてだった。「なぁに? どうしたの? 急に。あ、赤ちゃん、男の子なんだよ。ミズキくんっていうの」と、なぜか冷静を装ってリーちゃんに話しかけながらも、私は内心、めっちゃくちゃ嬉しかった。リーちゃんは何かを答える代わりに、ペロペロペロペロ、私にキスをした。
その時は、偶然なのかな、と思ったのだけど、次の日もまったく同じことが起こった。私がお腹の赤ちゃんに話しかける声の、優しいトーンに反応しているのかもしれない、と思ったけど、そのまた次の日も。リーちゃんは私がお腹の中の赤ちゃんに話しかけるたびに、私にキスを、してくれた。正直、とっても驚いた。リーちゃんは、お腹の中に赤ちゃんがいるってことを分かっているのだ。
私はその様子を動画に撮って、お義母さまに送った。何故か、「ありがとうお義母さま」って、その時、すごく、思ったからだ。


1年前。クラブで踊る私を見るなり、「ねぇ、俺と結婚してよ」とプロポーズをしてきた男は、ほんとうに私の最愛の夫となり、彼が口説きの一環として見せた写メールの中のチワワは今、その時はこの世に誕生していなかった新しい命の上にのって、私にペロペロとキスをしてくれている。そんな美しいことって、あるだろうか。

LIFE IS BEAUTIFUL.
LIFE IS SO BEAUTIFUL.



<おわり>

妊娠8カ月目の、おなか。

LiLy

LiLy

プロフィール

作家・コラムニスト。1981年生まれ。
NY、フロリダでのアメリカ生活をへて、上智大学外国語学部卒業。著書には小説『11センチのピンヒール』、『パープルレイン』(ともに小学館)、20代女性独特の恋愛観、セックス観を描いたエッセイ『さいごのおとこ』、『タバコ片手におとこのはなし』(ともに講談社)、夢を叶えるまでの7年間を綴った『Tokyo Dream』(幻冬舎)など多数。2009年6月に小説『グリーンライト』(小学館)が発売。

LiLyさんの著書をチェック!