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第9号

COMA-CHI『太陽を呼ぶ少年』について

COMA-CHIというフィメール・ラッパー/シンガーをご存知だろうか。
タイトに押韻しながら自分自身の生き様とリスナーの物語を揺るぎないリアリティをもって交差させるリリック、その交差点に立つストーリーテラーとしてメッセージをグルーヴィーな音楽に昇華させる巧みなフロウ、ラップすることと唄うことを同質の本能の発露として響かせることができる天性のボーカル力。
はじめて彼女の楽曲を聴いたときは、これまで日本の音楽シーンにはいなかった才能が現れたと、大きな興奮を覚えました。

2005年、日本語ラップの祭典『B-BOY PARK』のMCバトルで、女性初の準優勝という偉業を達成。
一躍大きな注目を集め、2009年2月にメジャー・デビュー。
順調にリリースを重ねていましたが、昨年10月のイベント出演をもってライブ活動の休止を宣言。
その後、今年4月に自身のブログで所属事務所及びレコード会社から独立したことを発表しました。
そのとき彼女はブログに以下のコメントを掲載しました。
「今までは沢山の人に聞かせる事、数字として結果を残す事を目指してた部分もありましたが、今は、必要としてる人になるべく近い距離で届けたい、自分のペースで真実を歌いたい、という価値観にシフトしました」

筆者は彼女にメジャー・シーンの最前線で闘い続けてほしいと思っていました。
彼女なら、J-POPの文脈に新しい音楽の可能性や価値観を提示できると思っていたからです。
いまでもその思いに変わりはありません。

しかし、新たな道のりを歩みはじめた彼女が最初に創造した作品——ここにある絵本付き EP『太陽を呼ぶ少年』を聴いて、これが彼女の譲れない生き様なのだと実感しました。
やはりCOMA-CHIは、どこまでもリアルなリリシストであるべきなのだとも思いました。
『太陽を呼ぶ少年』は“3月11日以降”を生きる私たちが本当に重んじるべき価値観とは何かという疑問を投げかけながら、その曇りなきメッセージ性を、同梱される絵本(作画/TOKIO)とともに彼女独自のエンターテインメントにも昇華している作品です。
サウンド面では、彼女にとっては初となる生音のバンド・スタイルにチャレンジ。
SWING-O(Key)、伊原“anikki”広志(Gt)、ROOT SOUL(Ba)、mabanua(Dr)という盟友の豪華ミュージシャンたちによるジャジーなグルーヴに包まれながら、どこまでも躍動的にラップし、歌うCOMA-CHIがここにいます。
リリースは11月23日。要注目です。

COMA-CHI『太陽を呼ぶ少年』
11月23日発売
ダイキサウンド
QRCD-1001

写真

【ライター紹介】
三宅 正一~取材にライブに子育てに。音楽を中心にせわしない日々を送るフリーライター~
1978年生まれ、東京都出身。雑誌「SWITCH」、「EYESCREAM」の編集を経て、2005年にフリーライターとしての活動を開始。音楽を中心に、カルチャー全般の執筆を手がけている。