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第15号

彼らのグッド・ミュージックは生き続ける。カットマン・ブーチェのベスト盤『2002-2010』について

カットマン・ブーチェというバンドがいました。彼らは、2011年1月22日に解散を発表。8年間の歴史に終止符を打ちました。あれから1年。バンドが残してきた忘れがたい楽曲群を凝縮したベスト盤『2002-2010』が2012年1月14日(土)にリリースされます。

2002年、大阪で結成されたカットマン・ブーチェは、ウリョン(Vo&Gt)、小宮山純平(Dr)、林周作(Ba)から成る3ピース・バンドでした。彼らは、どんなときも自分たちのブルースをもっていました。ルーツ・ミュージックに対する飽くなきリスペクトを、それがあってはじめて生まれるソウルを音楽に注いでいました。ウリョンが楽器屋に貼ったメンバー募集を通じて出会ったという3人は、フジロックにおけるG・ラヴ&スペシャル・ソースのライヴ映像に魅了され、ギター、ウッドベース、ドラムという編成で活動をはじめます。ルーツ・ミュージックの息吹を、いかに独自のリアリティと歌心をもって昇華できるかという点に強くフォーカスが当たった初期のオーセンティックなアプローチを経て、より大きなフィールドで音楽を響かせることを希求した彼らは、やがてロックやポップスの意匠を積極的に取り入れることで、豊かなポピュラリティを獲得していきました。

このまま彼らのグッド・ミュージックは力強く疾走し、広がっていくに違いないと思っていた矢先の2009年10月に林周作が脱退。ウリョンと小宮山純平のふたりになったカットマン・ブーチェは、葛藤の果ての決意として2010年6月に『Hello?』というタフなポップネスをたたえたアルバムを完成させました。しかし、その約半年後にふたりはカットマン・ブーチェを終わらせることを選択しました。その報せは、ひとりのリスナーとしてただただ切ない感触しかなかったです。ただ、このベスト盤を聴いて少し溜飲が下がる思いをしたのも事実です。結成から解散までの8年間、3人は一度も音楽人として、グッド・ミュージック求道者としての自分に嘘をつくことなく駆け抜けた。その歴史をつぶさに確認することができたからです。

本作『2002-2010』には、カットマン・ブーチェが残した16曲のグッド・ミュージックが収められています。バンドが終わっても、ここに焼きつけられたグッド・ミュージックは生き続けるのです。

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【ライター紹介】
三宅 正一~取材にライブに子育てに。音楽を中心にせわしない日々を送るフリーライター~
1978年生まれ、東京都出身。雑誌「SWITCH」、「EYESCREAM」の編集を経て、2005年にフリーライターとしての活動を開始。音楽を中心に、カルチャー全般の執筆を手がけている。