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第19号

解散を発表した東京事変。彼らは、幸福な季節を迎えたままバンドを終わらせようとしている。

既に多くの方がご存知のように、1月11日、東京事変が解散を発表しました。2月14日から29日まで横浜、大阪、東京で行われる全6本のラスト・ツアー『東京事変live tour 2012 Domestique Bon Voyage』をもって、結成から約7年9ヶ月に及ぶ活動に終止符が打たれます。世界的に見ても、ここまで豊潤かつ独創的なプレイヤビリティとクリエイティヴィティとポピュラリティを共存させているバンドは希有で、日本の音楽シーンにとって東京事変というバンドがいかに貴重な存在だったかをあらためて痛感している次第です。そして、最後まで完璧なアティチュードをもって、幸福な季節を迎えたままバンドを終幕させようとする彼らの美学には、本当に感服させられるばかりです。

1月18日にリリースされた、メンバー全員が1曲ずつ作詞作曲を手がけた5曲入りのアルバム『color bars』が最後のオリジナル音源集になりました。『Color bars』=カラーバーとは、テレビ画面がプログラムを放送していないときに表れる7色の棒状の帯です。このタイトルを最後のオリジナル音源集に冠するとは……粋すぎる!

これまで東京事変が発表してきたオリジナル・アルバムのタイトルにはすべて“チャンネル縛り”が設けられていました。『教育』、『大人(アダルト)』、『娯楽(バラエティ)』、『スポーツ』、『大発見』——。もっとも日常的なエンターテインメント装置であるテレビをモチーフに間口の広い入口を設定し、そこからこれまで誰も触れたことのないバンド・ミュージックの刺激や喜びをリスナーに提供していくという哲学に裏打ちされた、東京事変の音楽的高みは、確かに5thアルバム『大発見』で極まった印象はありました。しかし、彼らは必ずやまた極まった高みを更新していくだろう。そう思ってもいました。ただ、『大発見』をバンドの到達点とするのも、とても理解できます。

閑話休題。『color bars』ではメンバーの個にスポットを当て、それぞれから生まれた楽曲をメンバー全員で共有することで、東京事変の本質や構造を鮮烈なまでに浮かび上がらせようとする意志を感じさせます。それと同時に、それぞれの個が際立った楽曲に触れて、この5人のメンバーがひとつのバンドを形成しているのは、やはり奇跡でもあるのだなと、あらためて思い知るわけです。亀田誠治が手がけた「タイムカプセル」を除き、作詞作曲を担当したメンバーがヴォーカルも務めています。最後のオリジナル音源集らしからぬ刺激と好奇心に満ちた作品の佇まいに、思わずニヤリともさせられます。

そして、『color bars』を経て、東京事変はライヴ・セレクション・アルバム『東京コレクション』と最新ライヴDVD&Blu-ray『DISCOVERY』を2月15日に同時リリースします。そう、彼らがこの2枚のラスト・アイテムでスポットを当てるのは“実演”です。『東京コレクション』は、これまで行ってきたツアーのライヴ音源から選りすぐりの全14曲を収録。『DISCOVERY』は、5thアルバム『大発見』を携えて開催された『東京事変live tour 2011 Discovery』から、2011年12月7日に行われた東京国際フォーラムのライヴを完全収録しています。
徹頭徹尾、気高く美しいバンドであり続けようとする東京事変をしかと見届けようではありませんか。

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【ライター紹介】
三宅 正一~取材にライブに子育てに。音楽を中心にせわしない日々を送るフリーライター~
1978年生まれ、東京都出身。雑誌「SWITCH」、「EYESCREAM」の編集を経て、2005年にフリーライターとしての活動を開始。音楽を中心に、カルチャー全般の執筆を手がけている。