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第21号

ポップ・ミュージックの光が、ここに
Salyuの4thアルバム『photogenic』について

日本のポップ・シーンにおいて、もっとも“孤高”というフレーズが似合う女性ヴォーカリストと言っていいでしょう。Salyuのニュー・アルバムが完成しました。

多くのリスナーに知られているとおり、彼女の才能を見出したのは、音楽プロデューサーの小林武史です。Lily Chou-Chou名義の活動を経て、2004年6月にSalyuとしてメジャー・デビュー以降、彼女は小林武史とのタッグで順調に作品を重ね、ポップスの普遍性と可能性を追求する特別な求心力に満ちた楽曲群を世に送り出してきました。

その一方で、近年のSalyuは自らのアーティスト性を高め、あるいはシンガーとしての可能性を広げる活動を展開していました。2010年にリリースした3rdアルバム『MAIDEN VOYAGE』では初のセルフ・プロデュースに挑戦。また、昨年は共同プロデューサーにコーネリアス(小山田圭吾)を迎えた新プロジェクト、Salyu×Salyuを始動。1stアルバム『s(o)un(d)beams』では、多重録音によって構築される“クロッシング・ハーモニー”をコンセプトに掲げ、プリミティブかつエポックメイキングな歌の響きを創造しました。

そして、2012年2月15日。約5年ぶりに小林武史プロデュースによって制作された4thアルバム『photogenic』がリリースされます。過去最高にカラフルなポップ・サウンドに彩られた、全10曲。すべての曲が、“あなた”に寄せる想いが綴られたラブソングである一方で、アルバム全体に通底しているメッセージ性の核心にあるのは、新しい世界の扉を開ける力としての光です。Salyuのボーカルは、楽曲が折り重なっていくごとに、まるでひとりの女性が豊潤な色合いをもって成熟していき、最後には圧倒的な母性を感じさせるような物語性とカタルシスがあります。2012年の今、ポップ・ミュージックはリスナーが対峙する世界をどのように彩ることができるのか? 本作にはそんな視点が貫かれています。筆者は、Salyuと小林武史のタッグだからこそ描けるポップ・ミュージックのリアルなマジックに触れるような思いで本作を聴きました。

タイトルに冠された“photogenic”という言葉には、“写真うつりがよい”という一般的に用いられる意味のほかに“光を照らす”、あるいは“発光性”という語義も含まれているという。まさに光のようなポップ・ミュージックのダイナミズムをもってリスナーを照らし、包み込むアルバムが完成しました。必聴です。

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【ライター紹介】
三宅 正一~取材にライブに子育てに。音楽を中心にせわしない日々を送るフリーライター~
1978年生まれ、東京都出身。雑誌「SWITCH」、「EYESCREAM」の編集を経て、2005年にフリーライターとしての活動を開始。音楽を中心に、カルチャー全般の執筆を手がけている。