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第27号

シーンの未来を担う新鋭ロック・バンドがここに集結『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2012』ツアーファイナルの模様をレポート

日本のロック・シーンの未来を担う4バンドが集い全国をサーキットする『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR』。これまで数多くのバンドがこのイベントをきっかけに飛躍しており、『列伝 JAPAN TOUR』に寄せるリスナーの期待は大きい。6回目の開催を迎えた今年のテーマは“存在証明”。
アルカラ、OverTheDogs、クリープハイプ、The SALOVERSという世代もスタイルも異なるが、それぞれ揺るぎないロック哲学をもつバンドがラインナップされ、チケットは全公演ソールドアウト。3月10日(土)に赤坂BLITZでツアー・ファイナルを迎えた。
開演前からフロアに充満していた熱気は、トップバッターのThe SALOVERSがステージに登場すると大きな歓声とともにさらに上昇。1曲目「狭斜の街」から鋭利な衝動をありのままに体現するようなプレイを見せつける。ニュー・シングル「ディタラトゥエンティ」では、疾走感に身を任せるのではなく、静と動のコントラストがついたサウンドをダイナミックに響かせ、急速に進化しているバンドの現在地を示した。
ヴォーカル&ギターの古館はツアーが終わることの名残惜しさを滲ませながらも、「ツアー中に『“存在証明”とは何だろう?』ってメンバーと話したんですけど、結論としては今やれることをビシッと今やることが存在証明になるなと思った」と力強く語った。ラストはリリカルなロック・バラード「愛しておくれ」を情熱的に鳴らし、メンバーはステージをあとにした。

 

2番手は、OverTheDogs。生と死をテーマにした楽曲を、ドラマティックかつ鮮やかなポップネスをたたえたサウンドで構築する彼らは、全7曲でひとつの物語を描くようなステージを展開。恒吉の中性的なハイトーン・ヴォイスは、時に切迫した緊張感を生み、時に会場全体を優しく包み込むように響いた。
恒吉は最後のMCで「ライヴができるのはやっぱり幸せなことで、生きてるうちはずっとライヴをやれたらいいなと思います。メンバー全員がオムツになってもライヴをやり続けたいと思います」と語り、ラストの「本当未来は」へ。どこまでも繊細でありながら、タフな意志が貫かれたメッセージ性は、忘れがたい余韻を残した。

 

続いて登場したのは、クリープハイプ。ヴォーカル&ギターの尾崎世界観が「それでは次世代ギター・ロックの星、クリープハイプはじめます」と言い放ち、4つ打ちのダンス・ロック・ナンバー「ウワノソラ」からライヴの幕を開けた。挑発的なバンドのプレイに触発されるように踊り狂うフロアのオーディエンス。ジャジーかつメロディアスな「グレーマンのせいにする」、急進的なビートでロックンロール・サウンドを転がす新曲「愛の標識」など、縦横無尽に躍動する強靭なグルーヴを武器に会場の熱量を上げ続けた。その音楽性とパーソナリティに不敵さと人懐っこさが違和感なく同居しているのが、彼らの魅力だ。
そういった意味においても、ラスト「イノチミジカシコイセヨオトメ」の前に尾崎が語った言葉がとても印象的だった。「今回のツアーで、ずっと自分のなかにあたりまえのようにあるものをもっと大事にしようと思いました。あなたたちにもありますよね?それを大事にしてもらえたらと思います。そして、それがクリープハイプだったらいいと思います」 。

 

そして、トリを飾ったのは“ロック界の奇行師”を標榜(ひょうぼう)するアルカラ。ステージに登場するなり、ヴォーカル&ギターの稲村がザ・ブルーハーツの「リンダリンダ」の唄い出しを引用しながら“♪写真には~写らない~美しさが~アルカラのライヴがはじまるよ!”と合図。以降、トリッキーな展開を見せるオルタナティヴ・サウンド、独特のユーモア・センスが注がれた歌詞、劇的でキャッチーなメロディが融合した楽曲群を披露しながら、枚挙に暇がないほど会場中を爆笑の渦に巻き込むMCを挟み込んでいった。
今回『列伝 JAPAN TOUR』に名を連ねた4バンドのなかで最年長である彼らの存在感は、実に頼もしかった。ツアーを通して参加バンドに結束が生まれるのも『列伝 JAPAN TOUR』の特徴だが、今回それを牽引していたのはアルカラだった。アンコールの「交差点」では、4バンドの全メンバーがステージに集結。バンドもオーディエンスも大熱狂の大団円となった。

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【ライター紹介】
三宅 正一~取材にライブに子育てに。音楽を中心にせわしない日々を送るフリーライター~
1978年生まれ、東京都出身。雑誌「SWITCH」、「EYESCREAM」の編集を経て、2005年にフリーライターとしての活動を開始。音楽を中心に、カルチャー全般の執筆を手がけている。