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第33号

KREVAの秘蔵っ子、SONOMIがここに覚醒
移籍第一弾にして、初のセルフ・プロデュース作『I』を聴いた

彼女はここから音楽人生のネクスト・フェイズを強く踏み出す。KREVAにその才能を見いだされ、2005年にリリースした1stアルバム『S.O.N』にはじまり、これまでオリジナル・アルバムをリリースするごとにSONOMIを形成するイニシャルのピースが埋められてきた。2ndアルバム『S.O.N.O』、3rdアルバム『S.O.N.O.M』といった具合に。それは、彼女の成長の記録であり、自分だけのポップ・ミュージックを追求する旅でもあった。最後のアルファベットにして、来るべき“SONOMIの完成”を予感させるこのミニ・アルバム『I』は、彼女のリアルなパーソナリティを示すものであると同時に、常にラヴソングと向き合ってきた音楽的アイデンティティを表すものでもある。

rhythm zoneへのレーベル移籍第一弾にして、これまでトータル・プロデュースを担ってきたKREVAから自立し、初のセルフ・プロデュース作となった本作で、彼女は自らの素顔、音楽に対する衝動、ラヴソングを通してあぶり出す愛の輪郭を剥き出しにしている。SONOMIの『I』は、こんなにドキドキする―。

 

『I』に収録されている5曲の色合いは、どれも既存のジャンルを当てはめるのが難しい。ベースとなっているのはシンセ・サウンドなのだが、純然たるシンセ・ポップとも違うし、R&B的なトラックでもない。ただ、独特のリリシズムとポップネスをたたえているのは確かだ。さらにそのトラックの上で、彼女の情感豊かな声色が、自由なフォームを描くメロディ・ラインをなぞると、並びないSONOMIのポップ・ミュージックは、鮮やかにその像を結んでいく。

全曲ラヴソングで統一された歌詞の筆致もまた、これまで以上にエモーショナルに自らの経験やそこで沸き起こった感情を投影。失意のどん底にあったいつかの失恋から、いつの間にか完全に立ち直っている姿をポジティヴに刻むオープニング・ナンバー「何とかなる」で、彼女は自身の代表曲のタイトルを引用しながらこう唄っている。

 

<「一人じゃないのよ」って歌う私を疑った日もありました>

実際に採用するか最後まで迷ったというが、こんなフレーズを唄えるのが、今の彼女の強さでもある。ここから、またはじまる。シンガーSONOMIとリスナーの新たなコミュニケーションが、『I』で育まれていく。

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【ライター紹介】
三宅 正一~取材にライブに子育てに。音楽を中心にせわしない日々を送るフリーライター~
1978年生まれ、東京都出身。雑誌「SWITCH」、「EYESCREAM」の編集を経て、2005年にフリーライターとしての活動を開始。音楽を中心に、カルチャー全般の執筆を手がけている。