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第48号

映画連載【取材のウラ側!!】編~フィナーレ~さよならするのはつらいけど~

あ、映画コラムが終わっちゃった!! 1年間ありがとうございました!! また逢う日まで

この映画連載、最後になりましたね! 映画ライターのような仕事をしている鴇田崇です。ジョン・ウー監督に始まって、早1年。さまざまな監督、俳優、クリエイターの方々へのインタビューをお届けして参りましたが、何かちょっとでも映画チョイスの、ひいては人生の参考になっていただいていれば、担当者としてうれしく思います。映画って、観ている本数や年数、人生経験によって理解度が変わるものです。チンプンカンプンだった作品が後で名作であることを思い知らされ、大傑作だと思っていた作品が……と思い直すこともあるでしょう。つまり映画は<自分が今どれだけ生きているか?>を知ることが可能なツールでもあるのです。そんなことわかっとるわいっ!と言われそうな夏休みですが、いつでも好きな時に、無数の映画が簡単に楽しめる環境にあることが、どれだけ幸せなことかオレは言いたかった。それではまた近いうちに!また逢う日まで、さよならをもう一度。

『闇金ウシジマくん』山田孝之&林遣都!! 「闇金も債務者も、パワフルなことは確か」

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まずご紹介する作品は、演技派・山田孝之が情け容赦ない伝説の闇金業者・丑嶋(ウシジマ)役に挑み、カネや欲望に踊らされ人生を見失う債務者たちを徹底的にシメ上げる“サバイバル”エンターテインメント『闇金ウシジマくん』! ウシジマ役の山田、そして野心家のイベントサークル代表・小川純役の林遣都に話を聞いた!
今作は出会いカフェにハマるフリーター・未來(大島優子)と林演じる純が、ウシジマと出会ったことで欲望の代償を知る、どこにでもいる若者たちの、どこにでもある欲望の結末を描くストーリー。ドラマ版に続いてウシジマ役を続投した山田は、「ドラマ時代のスピード感を維持しながらも、映画独特の間が新鮮でしたね」と新テイストの映画版を説明。一方、初参戦の林は、「この映画に純というウシジマくんと戦う立場で出て、いろいろな経験ができました」と伝説の闇金さえも利用しようとする若者役で戦えた時間に感激していた。ただ、債務者を吊るし上げ、徹底的に絞り取るウシジマは法を犯すダークヒーローだが、「債務者たちも含めて、これくらいパワフルに生きていくことは、大事だとは思います」と反面教師視点で本作を観れば、「人生のヒントが見えてくる」とアドバイスを贈る山田。「ヘタをしてミスをしてでも、もっとガンガン生きろよっていう、前を向くためのメッセ―ジはあると思いますね」。悪の視点で悪を徹底的に描くことで、人生の大切なモノを知る。夏が終わる前に観やがれ!

セイジ -陸の魚-』監督・伊勢谷友介に直撃!! “人を助けることとはどういうことか?”

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俳優としても活躍中の伊勢谷友介監督第2作は、“人を助けるということが何を持って助けることになるのか”という命題に衝撃の回答を示した野心作! 伊勢谷監督を直撃した。バブルの熱気が残っていた時代。学生最後の夏休みを迎えた“僕”(森山未來)は自転車旅行に出かけ、旧道沿いのドライブイン“HOUSE475”に辿り着く。普段は寡黙だが心を捉える言葉を使う店主のセイジ(西島秀俊)に強く惹かれた“僕”は住み込みで働くようになるが、セイジが特別に心を許す常連客の1人、ゲン爺(津川雅彦)の幼い孫娘・りつ子の身に、平和な日常を一瞬で吹き飛ばす凄惨な事件が起こり、セイジは予想外の行動に――。原作は“編集者が泣ける本”オールタイムベスト10に選ばれた、辻内智貴のベストセラー小説。企画が立ち上がった5年前、伊勢谷監督の中では腑に落ちない点があったという。「セイジという人間の意味的なポジションが気になりました。原作では何もしない男にも関わらず周囲から神のような扱いを受けていて、是とされていました。それが僕の中で腑に落ちなくて」。以後、辻内氏ともディスカッションを重ね、セイジのキャラクターを変えた。「セイジも精神的な苦しみや傷を乗り越えるための行動に出る必要がありました」。そして、セイジは前述の命題に“とても極端なアプローチ”で答えを出してしまう――。幕切れは衝撃だが、その命題に対する答えは人生でとても重要! 本作が問うテーマを確かめて!

『最終目的地』真田広之が、名優アンソニー・ホプキンスの“パートナー”役を熱演だ!!

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さて最後にご紹介する作品は、『眺めのいい部屋』('86)『日の名残り』('93)など数々の文芸作品の傑作を放った名匠ジェームズ・アイヴォリーの集大成、『最終目的地』! 『上海の伯爵夫人』('05)に続いてアイヴォリー作品2作目の出演となった、真田広之さんにお会いしましたよ! アメリカの現代作家ピーター・キャメロンの同名小説が原作の本作は、南米ウルグアイを舞台に、自殺した作家の妻、愛人と娘、兄とそのパートナー、作家の伝記を執筆するために訪れた若い伝記作家、それぞれが抱える事情と人間模様を巧みに織り込み、人生を見つめ直す感動的なドラマだ。真田さんは、名優アンソニー・ホプキンス演じる自殺した作家の兄アダムの“パートナー”役で、要は“そういうこと”です。「事前にそういったカップルを観察してリサーチだけはしたんですが、クランク・イン前に監督から『よけいなことをしなくていいよ』とクギをさされました、多分、真田がよけいなことを考えていると察知したのでしょう(笑)」と役作りの過程を明かしてくれました。作品を観ればごく普通の関係に見えて、さすがは芸達者な名優たちの共演といった印象なのだ。「『外見的にそれっぽくせず、普通でいい』、と。確かに彼らは知らなければ分からないように自然なんですね。隠しているわけではないけど自然で、人間の精神的な結びつきを監督は描きたかったのだと思います。法律的には“親子”だけど“人間愛”の高みまで到達しているという感じでしょうか」と撮影中に目指した関係性を語ってくれた真田さん。この映画は国際的に活躍する俳優たちが、自分の故郷といえる場所を持たず、漂うように生きながら人生の“最終目的地”へと向かう途上の人物たちを情感豊かに好演。見事なアンサンブルで上質な物語を紡ぎ出していく。公開を迎えた心境について、「純粋に嬉しいのと、日本の、世界からの注目のされ方とか世界の中の日本というポジションがどんどん変わっていることを考えると、今こそ、この映画を観て感じて考えてもらえるのに相応しい時期とも想えます。元々普遍的な物語ですが、時代がテーマに近付いてしまったのかなと」というメッセージを最後に寄せてくれた真田さん。公開は秋。文芸作品が似合う季節ですな!

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【ライター紹介】鴇田 崇~年間で延べ250人のインタビューを敢行する映画ライター~
1974年生。国内最大級のアクセスを誇る総合映画情報サイト「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長職を経て、現在はフリーのライターに。
超得意なジャンルがない変わりに苦手なジャンルもないが、得意“技”はインタビューで、年間延べ250人ほどの来日ゲスト、俳優、監督への取材を行い、相手のホンネを引き出す雑談のような語り口と雰囲気作りは一部の関係者に定評がある。 好きな言葉は「いつか皆死ぬ」。嫌いな言葉は「着地点」。
史上もっともアガッたインタビューは、あのM・ナイト・シャマラン監督に「キミの体からは気が出ている!」とホメられたこと。
主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦シリーズの『シベリア超特急5』(’05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(’09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。