解説
映画製作の現場の困難をヴェンダース独特のたゆたう映像が、物語そのままに苦悩に停滞したり、当てもなくさまよったり……。いつまでも焦点を結ばないところが却って魅力的な前半と、一転してノワール的ムード濃厚なB級映画のノリという後半の二部構造を持つ映画で、「ハメット」と並行して製作された。SF古典のリメイクを撮影中の一隊は資金が底をつき、ポルトガルの海岸の村で立ち往生する。監督のフリッツはプロデューサーと連絡が取れず、業を煮やしたあげく、会うために自らロスに飛ぶが……。

[ネタバレ]ヨーロッパ映画の敗北 ☆☆☆☆☆
投稿者:マッコイ 2009年10月24日
劇中劇『生存者たち』を白黒映画で撮影したり、その中で説明要素を出来る限り排除しようとする監督フリードリッヒは【純粋な映画作家の象徴】であり、それを一切認めようとしないプロデューサー・ゴードンなどが【ハリウッドの象徴】のように見えます。最終的にゴードンが殺された直後に、8mmカメラで見えざる敵に立ち向かおうとするフリードリッヒですがその抵抗もむなしくあっさりと殺されてしまいます。このことからこの作品のテーマが【映画の純粋性の敗北】ということだと思いました。では何に対して敗北するのか?それは【アメリカ映画文化、即ちハリウッド】にです。
ロスでゴードンを探すフリードリッヒがハリウッド・ウォーク・オブ・フェームの敷石でオーストリア出身のハリウッドプロデューサー、フリッツ・ラングの敷石を発見します。これを、フリッツ・ラングをハリウッドで成功したヨーロッパ人の象徴としていると単純に考えられますが、私的解釈としてはこの『ことの次第』と非常に良く似たテーマを扱った作品であるゴダールの1965年作品『軽蔑』 にフリッツ・ラング自身が登場しているのですが、これにより『軽蔑』とのテーマの共通性を暗喩しているようにも思えました。
映画製作者の苦悩を扱った作品は前述の『軽蔑』の他にも、フェデリコ・フェリーニの『8 1/2』やフランソワ・トリュフォーの『アメリカの夜』、ウディ・アレンの『さよなら、さよならハリウッド』などがありますが、この『ことの次第』ほどに【映画の純粋性】や【ヨーロッパ映画的存在】の敗北を明確に表現した作品はないと思いました。
★ヨーロッパ映画通信というブログやってます。
ameblo.jp/antonioni/
[ネタバレ]白と黒の座礁船 ★★★★☆
投稿者:リナ 2009年3月16日
ポルトガル最西端のシントラ海岸の
とあるホテルの解体現場で SF映画が撮影されている
ところがフィルムの一部を持ち帰ったままプロデューサーは戻らず
フィルムも資金も送られてくることはない。
一行は撮影中断を余儀なくされている。
ことの重要性を気にも留めず 遊ぶ子供たち
飲んだくれる者、思いがけず浮いた時間を
イライラと過ごす大人たち
ヴェンダースは「10ミニッツ」以外では初めてですね。
これを観るかぎりでは 好きなタイプかしら。
「なんとなく」「それとなく」の雰囲気の映画だと思っていましたが
暗礁に乗り上げた映画の製作を どうにかして治めたい監督の
苦悩の物語なんですね。そして この座礁は
「ハリウッド型」の映画製作から外れたものたちの座礁でもあるんです。
「アメリカ人の出演者を増やす」こと 「映画には物語が要る」こと
「白黒映画」には価値がないということ
そんな理由はフリードリヒを そしてヴェンダースを追いやってしまうのです。
「人物と人物との空間で映画は作られる。それがリアリズムである」
そう主張するフリードリヒのこの映画の行き着く先
ことの顛末はいかにもプロデューサーが喜びそうな展開で締めくられる。
ヴェンダースの悲観ともとれる感慨深い作品でした。


- この2次元バーコード(QRコード)をケータイ(※)で撮るだけで、今見ている作品ページをケータイで見ることができます!
(C)1982 Reverse Angle Library GmbH
- ※記載内容は商品によって異なる場合があります。
































