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女の中にいる他人

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解説

鎌倉に住む杉本はある日隣人の田代と赤坂でばったり会い一緒に酒を飲む。帰宅後、妻さゆりが赤坂にある友人の弓子宅で絞殺されていたのを知らされる。さゆり、そして田代の妻、雅子。それぞれの女の、女の中にある別の一面を描いたサスペンス作。

女の中にいる他人の 解説

レビュー - 女の中にいる他人

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TSUTAYA DISCAS レビュー

[ネタバレ]家庭の中にある閉塞感   ☆☆☆☆☆

投稿者:おうち大好き  2009年8月9日
新珠三千代さんを見直した。
「小早川家の秋」で小津監督に甚く気に入られたらしいが、
「人間の條件」「私は貝になりたい」など数々の名作に出演し、灰汁が強くなくそれでいてとても印象に残る役柄を演じてくれている。今回はその「小早川家の秋」「江分利満氏の優雅な生活」に続き、三度目の小林桂樹さんの妻役である。
本作は、緊迫感を出すための陰影を強調した照明や、回想シーンの画面のゆらめき、驚いた顔のアップなどいつもの成瀬作品とは違う見せ方も楽しめるが、平板な筋立てで、私にとっては、さほど面白いものではなかった。
が、この映画は終わってからがじわじわ来る。
気の弱い夫をある意味、捨ててしまった妻。
しかし、その結果、今までその夫が持っていた後ろめたさ、良心の呵責を、嫌でも応でもそっくりそのまま受け継ぐ形になってしまったのである。
波打ち際で無邪気に遊ぶ子供たちを見守る母。これからの閉塞した人生を憂い、暗澹とした思いに捉われる。恐ろしい事をしてしまった後悔も、誰かにぶちまけたい衝動も、すべて己のなかに呑み込んでしまおうと決心する女。
重苦しい気持ちが、それに至るまでの有様を見せつけられた観客にも伝わり、
ラストの静止画で、カメラのシャッターを押されたように心に固定される。
げに恐ろしい。

女の中にいる他人

[ネタバレ]ぼんくらハムレット   ★★★☆☆

投稿者:ムーン  2009年6月8日
二枚目、三枚目といった範疇にも入らない平凡な顔、大人しく生きることだけが処世だと心得て来た小心男(小林桂樹)にも言い寄ってくる女がいた。
その親友(三橋達也)の奥さん(若林英子)と情事の最中に首を絞めて遊んでいるうちに、不器用男の悲しさか、力加減が解らず絞め殺してしまうという粋な罪を犯してしまう。
部下の管理もろくに出来ないくせに、分不相応な犯罪を犯した無能男は、自首も出来ずに現場から逃げ出して、おどおど、びくびく。昼間からビールを飲んで気を鎮めようとすると、折悪しく親友が通りかかり、一緒に行きつけのスタンドバーへ。
そこに電話で呼ばれた親友は、奥さんの行状を初めて知る。
家に帰れば、かわいい一男一女に、自分をマザコンにした母親、出来すぎた奥さん(新珠三千代)がパパの帰りを待っていた。
事件の推移を見守っていても、進展はなく誰も疑ってくれない。死んだ奥さんの親友(草笛光子)もあやしいと思って親友三橋に言いつけても本気にしてくれない。
正直しか取り柄のないこのバカ亭主。とうとう黙ってられなくて、よりによって奥さんに告白。普通なら今度は奥さんに絞め殺されていい筈なのに、出来すぎた女房三千代はすべてを飲み込んで温泉に送り出す。
温泉宿で死のうと思っていたが、飛び降り自殺者を見たら怖じけづいてそれもできず。あーあ、何処までヘタレなんだこのおっさん。
心配になって駆けつけた奥さんとはしっかり一夜をともにして、Hだけは忘れない。
敏感な子供は何かを感じて病気になるし。それを看病してくれたのが三橋さんじゃあ、さすがの鈍感男も罪の意識がもう限界。
今度は親友にコクって詫びを入れるがビンタ3枚で無罪放免。その上、親友は大阪に行ってしまうという。
住まいは鎌倉、勤めは東京、可愛い子供に美人妻、善き親友と、何でも持っているくせにそれを守ろうともせず、自分一人だけ罪の意識に酔…

女の中にいる他人

[ネタバレ]女は現実的   ★★★★★

投稿者:jean  2009年3月10日
これを今まで観ていなかったのが勿体無い程の名作。
成瀬監督には珍しいサスペンスで、最初から小林圭樹が犯人と匂わせる演出がサスペンスとして物足りないが、実は作品の力点はそこにはなく、密かなどんでん返しが主題と結びついている。
後半までずっと男目線で進んでいくのだが、最後には女の価値観で終結するところ、さすが成瀬監督だ。
つまりは男はロマンチックに陶酔して自己崩壊し、女は現実的で力強く行き抜く。
生命として強いのは結局は女なんだね。
成瀬作品に一貫するテーマだと思う。
役者では新珠三千代が素晴らしすぎる! 今まで2本くらい出演作を観たが、これは飛びぬけた傑作。
こういう奥さんは日本男児の理想ではないか?
実際、こんな事件がなければ申し分のない最高の奥さん、最高の家庭だったはずなんだよね。
前半は脇役かと思うほど抑えた地味な演技だけど、後半に入って切実な表情を見せ始めるところから魅入られっぱなし。
いい作品が1本でもあると、たちまちファンになってしまう。

女の中にいる他人

[ネタバレ]凡人のすごみ   ★★★★★

投稿者:ざじ  2008年10月15日
「社長」シリーズをはじめ、サラリーマン役に定評がある小林桂樹の主演作。ここでもやはり凡人の役なのだが、その内に秘めた苦悩や煩悩をかすかな表情の変化にあますところなく表現していて秀逸。「黒い画集・あるサラリーマンの証言」も似たテイストで、見比べると面白い。

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[ネタバレ]告白と呵責の欺瞞   ★★★★☆

投稿者:べっこう飴III世  2008年6月20日
 出版社に勤め、2人の子供と良妻に恵まれた田代は、とても生真面目な男なのだが、実は、親友・杉本の妻さおりと不倫関係にあった上に、彼女を殺めてしまう。さおりの友人のアパートで密会していた二人。ある日、さおりに、首をきつく絞めてくれと頼まれた田代は、はじめ冗談半分でそれを聞いてやるが、恍惚としたなおみの表情にあおられるかのようにして、手の力を強め、ついには彼女を殺めてしまったのだ。彼曰く、「現実と夢との間の細い線を越えてしまった」。
 罪の意識に苛まれた田代は、耐えきれず、妻に罪を告白するが、子供たちのことも考えざるを得ない彼女は、隠し通すよう勧める。
 しかし、自己意識にさいなまれ、体調を崩し続ける田代は、自らの罪を杉本にまで打ち明けてしまう。激怒する杉本ではあったが、田代は「悪い夢を見たのだ」と割り切り、田代にはこの件のことを忘れるように言う。杉本にとっては、この許しがかえって、彼の負い目を痛々しいものにする。
 そしてとうとう、杉本はある日、自首を決め、そのことを妻に告げる。それを聞いた妻は、酒に毒を混ぜ、夫を殺害する。事件は自殺として処理される。妻は、自分のしたことが、夫と同じ呵責を生むことを予感しつつ、映画は幕を閉じる。
 田代の告白は、自分の呵責を払拭するためにすぎず、残される家族のことなど考えもしない、自己中心的なふるまいに思える。とくに、自殺をほのめかす彼のふるまいは、なんだか芝居がかっていて、呵責の強度を見せつけるような厭味を感じる。
 そう考えると、彼が小道具として持っていた劇薬でもって、妻が最終的に彼を殺めるのは、田代の呵責の欺瞞に対する罰のようでもある。

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